「ネリ」について

これが「ネリ」の原料となるトロロアオイの根です。
秋に収穫された根を、専用の防腐剤につけておきます。

 

     

この根っこを刻んで細かくつぶし、水に漬けておくとねばねばの液が出来ます。トロロアオイはオクラの仲間なので、オクラと同じようなねばねば感です。これをゴミが入らないように布で濾して、「ネリ」の出来上がりです。
出来たネリをひしゃくですくうと、ひしゃくを少し傾けただけでつる〜っと全部流れてしまう感じ。卵の白身みたいですな。

 

     

そもそも「ネリ」とは何か?
よく皆さんに「糊ですか?」と聞かれるのですが、ネリは決して接着剤ではありません。その役目は楮の繊維を均一に水の中に広げさせ、簀の上での水の引き方を調節して、繊維をよく絡ませることにあります。
ためしにコップに入れて比較します。向かって左が水と楮繊維のみ、右が水と楮繊維にネリを加えたものです。

     

右の方が楮の繊維が均一に混ざっているのが分かるでしょうか。
ネリが楮の繊維一本一本を包み込んでいるので、水とよくなじむのです。

左の方は繊維が均一に混ざりにくいので、紙を漉いたときいわゆる「地合(ぢあい)の悪い紙」になってしまいます。

     
  また、ネリには水引きを調節するはたらきもあります。紙を漉くときに「簀」から水が漏る速度が、水だけだと早すぎるので、繊維をよく絡みあわせるひまがありません。ネリを入れることによって、原料液が簀の上に長く留まるので、そのあいだに簀桁をよく揺すって繊維同士を絡み合わせることが出来るのです。
     

紙を一枚漉くごとに、上に積み重ねて行く「紙床づけ」。こうして直接重ねていってもあとで一枚づつはがせるのは、ネリのはたらきによって繊維がよく絡まりあっているからです。
もしネリが少ないまま漉いて積み重ねると、あとではがせなくなることもあります。

 

     
   
舟をたて終わったら、いよいよ紙すきの作業が始まります。→次の作業へ